労災事故に対する労災保険の補償範囲はすべてにわたるわけではなく、会社は労災保険加入のみによっては免責されません。

  当社従業員が、当社請負のビル建設現場での作業中、倒れた鉄骨に挟まれ重傷を負いました。労災保険には加入していますが、補償はどうすればいいですか?

  本件のように業務災害により受傷した場合、労災保険により、まず、療養費について指定病院等で無料で治療を受けることができます(例外的に指定病院以外で緊急の療養を要する等相当と認められれば、指定外病院での治療費全額の支給を受けることができます)。

  また、療養のため会社を休んでいる間の賃金については、労災保険から事故発生前3ヶ月間の平均賃金の60パーセントに相当する保険給付(但し、はじめの3日間については、会社負担)と、加えて20パーセントの特別支給金のあわせて80パーセントが労災事故4日目から支給されます。

  ところが、会社には業務上、従業員に対する安全配慮義務があり、義務違反(事故に対する過失)が認められると、事故によって受傷者が被った全損害(残った差額賃金のほか慰謝料等を含む)から、前述した既払いの労災給付金との差額を会社が自らが負担しなければなりません。

  万一、受傷した従業員に後遺症が残ったり、死亡したりした場合どうなりますか?

  一定の障害が残った場合は、1から14級の範囲で段階に応じた労災保険給付が行われます。
  死亡した場合は、その遺族に対して、一定の年金や一時金のほか葬祭費が支給されます。
  ただ、これらの場合も保険給付の額は、受傷者の全損害を補うには十分ではないので、前述した場合と同じく、会社は受傷者が蒙った全損害から保険給付額を差し引いた高額な残損害について支払義務を負うこととなります。

  従って、このような不測の事態に備えて、従業員に対する十分な補償のためにも、労災保険の上乗せ任意保険に加入しておくことをおすすめします。