使用者が期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」と呼びます)を締結しようとする場合には、締結時に、契約更新の有無、契約を更新する場合又はしない場合の基準を明示しなければならないこととされています。しかしながら、有期労働者との契約更新を拒絶するいわゆる雇止めを行う場合、事案によっては更新拒絶が無効と判断される場合があります。

  雇止めは無効と判断されることもあると聞いたのですが、その有効性はどのように判断されるのですか?

  雇止めは、①反復更新された有期労働契約について雇止めを行うことが、無期労働契約における解雇と社会的に見て同視できる場合と、②労働者において、契約更新を期待することにつき合理的な理由がある場合に、その有効性が問題となります。
  雇止めの有効性を判断するにあたっては、労働者が従事する業務内容、契約上の地位の性格、労働者の主観的態様、更新の手続・実態、他の労働者の更新状況等の様々な事情が勘案されます。
  例えば、契約更新の際に何らの手続もせずに自動更新を行うことが慣例となっている場合や、他の従業員がほとんど全員更新される実態がある場合は、雇止めが無効と判断される可能性が高いと考えられます。

  雇止めを適法に行うためには、どのような対策を行えばよいのでしょうか?

  無期労働契約者と有期労働契約者との間の業務内容・労働条件に明確な差違を設ける、契約更新を期待させる言動を慎む、更新手続きを厳格に行う、全員更新を避けて雇止めの事例を実績として残しておく、有期労働契約を反復更新する場合の上限回数・期間等を予め定めておく等の対策が考えられます。
  例えば、有期労働者については、業務内容をできるだけ補助的なものとして、かつ、労働時間を短くするなどして、無期労働契約者との間に差違を設けることが考えられます。また、「基本的に契約を更新する」とか「多くの人は更新する」等の契約更新を期待させる言動は厳かに慎むべきです。
  もっとも、考慮要素は多岐にわたるため、有期労働契約を締結する際には、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

  法改正によって、有期労働契約が無期労働契約に転換される場合があると聞いたのですが、どのような場合が対象となりますか?

  平成24年8月に労働契約法が一部改正されたことに伴い、有期労働契約が無期労働契約に転換される仕組みが導入されました。具体的には、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みによって、無期労働契約に転換することとなります。
  よって、5年を超えて反復更新された有期労働契約については、上記A2でご説明をした対策を施していたとしても、労働者からの申し込みがあった場合には雇止めができなくなります。そして、会社側の事情で契約関係を終了させるためには、合理的な解雇事由が要求されることとなります。

2020年7月更新