高齢者が不動産や金銭を騙し取られるケースが増えています。財産の管理に不安を感じる方、身近にそのような方がいる方は、成年後見制度を利用することによって、信頼できる第三者に財産を管理してもらうことができます。

  祖父は土地建物、預金等の財産を持っていますが、なにぶん高齢で、誰かに騙されたりして財産がなくなってしまわないか心配です。どうしたらよいでしょうか?

  高齢者や知的障害をお持ちの方等、財産管理に不安がある方の財産を保全する方法としては、第三者によってその財産を管理してもらう方法があります。

  例えば、日々の金銭管理、入院費等の支払い、預貯金の管理、不動産等の財産の管理を信頼できる第三者に依頼できれば安心です。       

  その具体的な方法としては、大きく分けると、①財産を管理してくれる人を家庭裁判所で選任してもらう方法、②自分で信頼できる第三者に財産管理をお願いする方法の2つがあります。

  家庭裁判所に管理者を選任してもらうというのはどのような方法ですか?

  本人の判断能力の程度により、補助決定、保佐決定あるいは後見決定を申し立てることになります。申立ては、本人だけではなく、親や子供、兄弟等四親等内の親族や配偶者等でもできます。

  そして、これらの申立てが認められれば、財産は裁判所が選任した第三者(内容に応じて「補助人」、「保佐人」、「後見人」と呼ばれます)の管理に委ねられます(その管理の内容や程度は様々ですので、ご検討の際は弁護士にお尋ねください。)。 裁判所から後見人等に選任された者は、裁判所の監督を受けながら、財産管理をします。

  なお、家庭裁判所の手続において本人の判断能力につき鑑定が必要になることがあり、その場合、5万円~10万円を裁判所に予納する必要があります。
  また、選任された管理者への報酬は、身内等が管理者となった場合は無料であることが多いですが(管理者が報酬は要らないと言えば無料となります)、弁護士等の第三者が管理者となる場合は、管理する財産の規模や管理の手間等により合理的に算定された範囲での報酬が必要となります。

  自分で第三者にお願いする場合というのはどのような方法ですか?

  この場合、管理者となってもらう人と委任契約を締結する必要があります。この方法なら、委任契約の内容を自分で検討することになるので、どの財産をどういうふうに管理してもらうのかも自分で決めることができます(家庭裁判所の手続による場合には、管理の内容は概ね法律で決まっています)。

  ただ、この場合は、ご本人が少なくとも、財産管理契約の内容を理解し、判断する能力があることが必要です。つまり、この方法が使えるのは、財産を処分したりするのには不安があるが、財産管理契約の内容は理解できるという場合となります。

  ですから、この程度の判断能力がないような場合には、前記Q2の家庭裁判所の手続を経て財産管理をお願いする方法しかありません。

  また、このようなやり方の場合には、裁判所の監督等がありませんので、万が一管理を頼んだ人が、預かった財産を使い込んだりした場合も、なかなか発覚せず、被害が拡大してしまうという心配もあります。

  財産管理のことや、身体の介護等について相談がある場合、どこに問い合わせればよいですか?

  県、市町村、区の福祉課等に問い合わせれば、アドバイスをしていただけます。また財産管理等のうち特に法律に関することについては弁護士に聞かれるとよいでしょう。

  財産を第三者に管理してもらう場合、本人の理解力や判断能力の減退の程度や、いかなる財産をどのように管理するのかによって、前記の方法のうちどれを選択するのがもっとも適切かは変わってきますので、いずれにしても福祉や法律の専門家の意見を聞かれた方が良いでしょう。

2020年7月更新