先日,当院の医師が脳梗塞で亡くなったのですが,遺族が,当院での長時間労働を原因とする「過労死」であるとして,労災認定の申請をしています。このような場合,どのような基準で労災認定がなされるのでしょうか。また,当院に対して,直接,損害賠償請求がなされる可能性もあるのでしょうか。

  医療の高度化や人手不足により医師の過労死が問題になっていますが,医師の死亡が,労災として認定されれば,遺族には遺族補償給付がなされます。労災として認定されるためには,医師の死亡が「業務上」のものであると認められる必要があり,具体的には,業務を遂行していたこと,すなわち使用者の指揮命令の下に拘束されていたことと死亡との間に一定の因果関係(相当因果関係)が認められなければなりません。
そして,厚生労働省の認定基準によれば,脳・心臓疾患と長期間の加重業務との相当因果関係については,発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月ないし6か月にわたって1か月当たりおおむね80時間を越える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いものとして判断するとされています。
但し,労災として認定されて遺族に労災補償がなされたとしても,労災補償は,損害賠償の範囲を全て網羅しているわけではないので,別途,病院に対して,安全配慮義務違反や不法行為を理由に,民事訴訟(損害賠償請求訴訟)を提起される可能性もあります。